●オートバイ生産王国日本のバイク駐車事情
考えてみたら日本という国は世界一のオートバイ生産国なんですよね。
僕の手元にある「THE ENCYCLOPEDIA OF THE MOTORCYCLE」の表紙、裏表紙ともにホンダCB750ですし、日本メーカーの車両には多大なページを割いている事からも、世界中で認められているということなんでしょう。
ところが残念ながら、オートバイの駐車場に関してはなんともお粗末な国なんですね。わが国は。
2006年6月17日付 東京新聞の特集に「バイク受難 どこへ止める」という記事がありましたので引用、紹介しておきます。
バイク受難 どこへ止める
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060617/mng_____tokuho__000.shtml
改正道交法の施行から半月、路上駐車には民間の監視員が目を光らせ、住民の関心も高い。だが、もともと駐車場が少ないオートバイはどこへ止めるのか。利用者からは苦難を訴える声が上がる。二輪車をめぐる取り締まりの現状とは。 (宮崎美紀子、大村歩)
「バイクの駐車場はめちゃくちゃ少ない。ひどいですよ、本当に。バイクをこんなに造っている国なのに、肩身が狭すぎる」
東京都港区の「六本木オートバイ駐車場」にバイクを止めたIT企業の会社員(26)は不満をぶつける。
月決めのほかに一時間百円の時間貸しスペースが四十六台分あるが、取材に訪れた十六日午後四時ごろはほぼ満車。この男性もいつもは止められないという。
駐車違反の取り締まりが強化された六月以降、さらに状況は厳しくなっている。男性は続ける。「路肩の車用パーキングには駐車するなと警察に言われる。今までデパートの駐車場は、好意で止めさせてくれていたのに、今は車でいっぱいだから断られてしまう。バイクを止められる町にしか行かない、というよりも行けない」
ここから徒歩十分弱の六本木ヒルズ前に、今年五月末にオープンしたばかりの「六本木六丁目オートバイ専用駐車場」がある。値段は、先の「六本木駐車場」の倍の三十分百円。三十六台分のスペースがあるが、雨が降ったせいもあり、駐車中は十台程度と少ない。
ところが、駐車場のすぐ前の歩道には、見渡すだけで十台近いバイクが止まっている。駐車場を巡回していた「東京都道路整備保全公社」の職員は「バイクも結構、駐車違反でつかまっていますよ」と話す。
ちなみに原付、オートバイの放置駐車違反の反則金は、駐停車禁止場所で一万円(乗用車一万八千円)、駐車禁止場所で九千円(同一万五千円)。レッカー移動されればレッカー代も必要で、都の場合は原付が五千円、二五〇ccまでが六千円、それ以上は七千円。さらに保管料金もかかる。
「月決めは以前から契約している人がいるので空きは少ない。問い合わせは増えたが、時間貸し用は台数も少ない。それで駐禁とられると、バイク乗る人はかわいそうですよね」と駐車場職員。
駐車場を利用していたフリーター女性(20)は「八時を過ぎると取り締まりが減るので歩道に止めるんですが、今日はまだ時間が早いので初めて使いました」。
六月になってから違反でつかまったというウエーター(20)は「三十分百円でも、これから仕事なので止める時間が長くなり、金銭的に厳しい」と困り顔だ。
ふだん仕事でバイクに乗る人も困っている。
「バイクは、車のように留守番役が車に残ることができない。バイクは目をつけられたら一網打尽。今日も都内でバイクが片っ端から切符張られていましたよ。コンビニに寄ることもできない」とバイク便のドライバー(38)は嘆く。会社が立ち寄り先の近くの駐車場所を調べてくれているが「どうしても止めるときは、いちかばちかで、ダッシュですよ」と苦笑する。
別のドライバー(37)は「マンションの駐輪場には止めさせてもらえないし、四輪車の駐車場と交渉しても『バイクは燃料タンクがむき出しで火事の危険があるから』と断られる。今までは家の近くに止めていた人も取り締まられるから売るしかないですよ」という。
排気量五一cc以上の二輪車の保有台数は、ビッグスクーターや大型外国製オートバイの人気で伸びている。中高年ライダーの増加も後押しした。
国土交通省ほかの統計によれば、昨年四月現在、二〇〇〇年と比べ約三十万台多い約四百六十四万台に上る。駐車違反の取り締まり件数も増え、〇四年は約三万件とその十年前の三倍を数える。
「駐車場がないのに、駐車禁止だとして取り締まられてきた」と語るのはメーカーや販売店でつくる日本二輪車協会の担当者だ。同協会の〇二年調査では、東京都と政令指定都市の百九十四公共駐車場のうち七割以上がバイクお断りだったという。
二輪車に冷たい実態を反映したのか、ライダー側の意識も鈍い。東京都道路整備保全公社が昨年まとめた調査によると、駐車場が「無料」の場合に85%が利用すると答えた。
調査の委員長を務めた東京海洋大の高橋洋二教授(交通計画)は「バイクのユーザーはこれまで、駐車場にバイクを止めるということは、はなから考えていなかったところがある」と説明する。
高橋教授が期待するのは、先月末成立の改正駐車場法によってバイク用の駐車場が拡大されることだ。これまで同法は、対象を「自動二輪車を除く」としていたため、自治体側は「法律上、対象除外されているので予算がつけられない」などとして二輪用駐車場造りに積極的でなかった。
この除外規定がなくなると「新たに駐車場を造る場合、自治体の条例などによりオートバイ駐車場設置を義務づけることもできる」(国交省街路課)という。
とはいえ法改正がすぐに問題解消につながるのか。
交通環境問題に詳しいジャーナリストの中島みなみ氏は「新宿や銀座の巨大地下駐車場では四輪車のナンバープレートを機械で読み取って課金する仕組みで、バイクには対応できないようだ。既存の駐車場は取り締まり強化によってもうかっていて、民間の駐車場経営者がオートバイのために新たに投資する意欲は薄い。造ろうと思ったとしても、法の施行基準が不明なので、まだ動けずに開設は遅れる」と指摘、法改正の即効性に疑問を持つ。
さらに「うがった見方かもしれないが、民間への委託金に見合う違反金収入を得るために民間駐車監視員は絶対にノルマが課されているはずで、“難民状態”にあるオートバイは絶好の標的となるだろう。ライダーはだまされているといってもいい」と解説する。
中島氏によれば、バイクのライダーは四輪車と同様にガソリン税などを払っている立場であるのに、駐車場をはじめ四輪車に比べて見劣りする利用環境だ。行政の施策や人の配置をみても二輪車への理解は乏しく、ライダー側には不公平感が強まり、駐車モラル低下の一因となる。その結果、一般社会との問題の共有につながらない-という悪循環になるという。
これまで二輪車の駐車場が整備されてこなかった現状に対して、前出の高橋教授は「一台当たりの消費エネルギーが少なく、道路上に占める大きさも小さいオートバイは環境や渋滞緩和の面からみても優れているはずだ」と、バイク利用を増やす意義を唱える。
中島氏は「二輪駐車可能を示す全国統一マークを作って駐車場へ誘導するといった基本的なことすらしていない。国交省はオートバイを含めた駐車環境についてのマスタープランをつくるべきではないか」と注文する。
冒頭の会社員は、ライダーの声を代弁する。
「駐車場を造らないんだったら取り締まるな、と言いたいが、それよりも、路肩に整然と止められるスペースを造ればいい。バイクに乗る人は小回りが利くから乗っている。車とは乗り方が違う。お金をかけた駐車場を所々に造るよりも、簡単な造りでいいからあらゆる所に造った方がいい」
<デスクメモ>
イタリアの小話で「カワサキさん、スズキさん、ヤマハさんの三人は海岸で何をしてるのでしょう?」。答えは「ホンダ(onda=伊語で波)を待っている」。世界的な二輪メーカーがそろう日本だが、ライダーが路上駐車を余儀なくされ、駐禁で摘発される。このギャップにはイタリア人もびっくりか。 (学)
何度も書いてる通り、僕は「少しはエコに役立つだろう」の思いで四輪車を下りオートバイだけの生活に切り替えたのだけど、オートバイだけの生活がこんなに困難なものだとは想像もしていませんでした。
困難の原因は寒さでも雨でもなく、法律やイメージの無理解だという事が本当に悲しくもあり腹立たしくもあり。という気持です。